<西沢士郎>
西沢士郎は身体をくの字に曲げ、震えていた。
震える視線の先には、この世のものとは思えない景色が広がっていた。
爆破で薄く抉られた地面。乾燥しているのか、もともとそういう土色なのか、とにかく白っぽい色をしている地面に、半径2メートルほどの黒い円が出来ていた。
そして、その周囲に散らばる肉片。腕、手足、衣服の残骸。半壊し脳漿が漏れた頭部も見える。片腕と両脚が中途半端にもがれた胴体部分も見える。
士郎がいるのは、背の低い植え込みで囲まれた児童公園だ。北の集落にあり、エリアとしてはDの4になる。
過疎気味の島のこと、ただ整地しただけ、申し訳程度にベンチや遊具が置かれているだけの、広場と表現しても差し支えのないようなささやかなものだったが、掲示板に貼られた自治会の案内や、砂場に残されているプラッチク製のシャベルなどから日常的に使われていた場所だと想像できる。
しかし、もし島民が今のこの惨状を見たら、これからは誰も近づこうとはしないに違いない。
立っていられなくなったので、整地された地面に膝をつき四つん這いになった拍子、両手のひらに血がついた。そのぬめった感触に深い恐怖を感じ、わっと飛びのき、座り込む。
あぶくのような唾液とともにこぼれる恐怖、顎先ががくがくと震えた。跳ね上がった心臓が恐怖ともに口から出そうだった。震える身体を叱咤しじりじりと後ずさりをしたら、何かが背にあたった。
短く切った悲鳴をあげ、後ろを振り返ると、そこには木のベンチがあった。ベンチも爆風に煽られ、焦げ付いている。
身体が焼けるように熱かった。
自身も火傷をしているはずだった。少しでも早く、応急処置をしなければならない。
焦げ臭い火薬の匂いが、焼けた人肉の匂いがあたりに充満していた。友人たちの死の匂いがした。
息が乱れ、脈が暴れ、流れ落ちる涙や唾液が士郎の制服の上着を濡らした。その布地は赤黒い血に汚れていた。
「亜矢、陽平、雄樹……」
友人たちの名前を呼ぶ。田中亜矢、加賀山陽平、田岡雄樹。肉片となった友人たちの名前を呼ぶ。
この場所で何があったのか。それは士郎しか知らない。
<田中亜矢、加賀山陽平、田岡雄樹死亡。残り24人/32人>
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